研究目的
適切な就労支援を受ければ、重い精神疾患の人でも就労できることが知られています。しかし、なかなか就職にたどり着けない場合、「年齢のせいで仕事が見つかりにくいのかも?」「学歴のせい?」など、悩みが生まれるかもしれません。本研究では、就労支援サービスを受けている精神障害を持つ人について、年齢や学歴、性別や診断などのさまざまな属性と就職しやすさが関連しているかどうかを検証しました。
就職しやすさは人によって差がある?

就労支援サービスを利用した人について分析したところ、一部の属性が就職しやすさや就労期間に関連していることがわかりました。
- 全般的機能尺度(GAF)スコアが高い人の方が、一定期間内に就職できる可能性が高くなり、就労期間も長いことがわかりました。
- 男性の方が女性よりも就職しやすいことがわかりました。
- 神経症性障害を持つ人の方が、統合失調症や双極性障害を持つ人より就労期間が長いことがわかりました。
- 年齢、学歴、就労経験、入院経験などのその他の属性は、就職しやすさや就労期間との関連が示されませんでした。
その人の精神的な健康度や、生活で発揮できる能力を総合的に見て1点から100点の間で評価するものです。今回の調査対象者の平均スコアは51点でした。51~60点の目安は、「中等度の症状または障害」で、例として「感情が平板的、会話がまわりくどい、恐慌発作がある、友達が少ない、仲間や仕事の同僚との葛藤」が挙げられています。
まとめと一言
- 年齢、学歴、就労経験、入院経験などは、就職しやすさと関係がありませんでした。
- 症状や障害程度が小さい人は、就職しやすく、かつ長く続く傾向がありました。
- 女性は男性と比べて就職しにくい可能性がありました。
本研究の重要な点は、就労支援を受けてうまくいくかどうかを左右する個人の属性は、あまり多くないということです。年齢が高い人も、大学を出ていない人も、1年以上働いていない人も、最近退院した人も、就職の可能性が他の人と差がないことを示す結果になりました。今後は個人の属性よりも、就労支援の強度・スタッフの能力などの要因に注目した研究を進め、より効果的な就労支援を多くの人に届けていくことが重要です。
研究概要
精神障害を持つ人に対して援助付き雇用プログラム(IPS)を実施する16の事業所において、2017年の1月から6月に利用開始した202名を対象に、2年間の追跡調査を実施しました。2年間のうちに就職したか否かと、その就職期間について調べ、分析しました。
本研究は、援助付き雇用プログラム(IPS)の効果を調べた先行研究(Yamaguchi S, et al. Predictive Association of Low- and High-Fidelity Supported Employment Programs with Multiple Outcomes in a Real-World Setting: A Prospective Longitudinal Multi-site Study. Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research. 2021.)のデータを使用しました。
発表
論文
五十嵐百花, 山口創生, 佐藤さやか, 塩澤 拓亮, 松長麻美, 小塩靖崇, 他. IPS型就労支援を利用した精神障害をもつ人における就職・就労週数の予測要因. 精神神経学雑誌. 2023;125(3):183-93. https://doi.org/10.57369/pnj.23-027 (無料公開)
