就労条件の希望マッチ度と就労継続に関する研究

研究目的

精神障害を持つ人にとって就労のハードルは高く、仕事に就きたいと思いながらも実現できていない人が多いことが知られています。どうすれば、その人に合った仕事を見つけ、長く続けられるのかを明らかにすることが重要です。本研究では、仕事を探す時の希望条件と、実際に仕事に就いた時の条件がより多くマッチしていれば、仕事が長続きするという仮説を検証しました。

希望とマッチした仕事は長続きする?

就労支援サービスを利用して就職した人についてデータを取り、職種・月収・労働時間・通勤時間・障害開示の5項目のうち何項目が希望とマッチしたかという「希望マッチ度」と、その仕事がどれだけ続いたか(就労期間)の関連を調べました。

分析の結果、マッチ度が高いほど就労期間が長い傾向がありました。マッチ度3の就労期間(平均49.2週)と、マッチ度4の就労期間(平均57.3週)は、それぞれマッチ度1の就労期間(平均22.8週)よりも有意に長いことが示されました。また、マッチ度の低い群(1・2)と高い群(3・4・5)の2群に分けて比較しても、マッチ度の高い群の就労期間が有意に長いことが示されました。

まとめと一言

  • より希望に近い仕事に就けば、その仕事が長続きする可能性があります。
  • 就労支援では、利用者の希望に合った仕事に向けて支援することが重要です。

本研究の結果は、当たり前のことに感じられるかもしれません。しかし、精神障害を持つ人の就労支援の歴史において、本人の希望が重視されてきたとは必ずしも言えないのが現実です。本研究は、本人の希望を優先する支援が効果的であるという考えに科学的根拠を提供し、利用者中心の支援を後押しすると期待されます。

研究概要

精神障害を持つ人に対して援助付き雇用プログラム(IPS)を実施する16の事業所において、2017年の1月から6月に利用開始した202名を対象に、2年間の追跡調査を実施しました。利用開始時に支援スタッフが利用者の仕事の希望を聞き取りました。2年間の間にあった計130回の就職を分析しました。

本研究は、援助付き雇用プログラム(IPS)の効果を調べた先行研究(Yamaguchi S, et al. Predictive Association of Low- and High-Fidelity Supported Employment Programs with Multiple Outcomes in a Real-World Setting: A Prospective Longitudinal Multi-site Study. Administration and Policy in Mental Health and Mental Health Services Research. 2021.)のデータを使用しました。

発表

論文

Igarashi M, Yamaguchi S, Sato S, Shiozawa T, Matsunaga A, Ojio Y, et al. Influence of multi-aspect job preference matching on job tenure for people with mental disorders in supported employment programs in Japan. Psychiatr Rehabil J. 2022;46(2):101-8. https://doi.org/10.1037/prj0000541

学会発表

五十嵐百花, 山口創生, 佐藤さやか, 塩澤拓亮, 松長麻美, 小塩靖崇 他. IPS型就労支援利用者における就労条件の希望マッチ度と就労期間の関連. 第17回日本統合失調症学会. オンライン, 2023年3月26日(口頭発表)

プレスリリース

就労条件の希望マッチ度が就労期間と関連することを実証 ―当事者の希望を優先する就労支援の後押しに― 国立精神・神経医療研究センター プレスリリース.  2022 年10 月6 日 https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20221007p-2.html